立ち退き料判例―立ち退き交渉と借地借家法借地権・正当事由への補償

立ち退きとは?(意味)

立ち退きの意味は、その場所の占有権を解除することです。立ち退きとは、単に場所から退くこと、移動することを意味する点で、その場所を空の状態にして引き渡す「明け渡し」とは主意が異なります。

明け渡しは、占有者の主体性によって占有解除をする意味合いがあります。
例えば地主への借地権売却の後のように、自ら立ち退くような自主的な活動を意味することが多く、強制的に「立ち退かされる」こともある立ち退きとは、不動産取引において違った使われ方をします。

東京都の密集した町並み

立ち退きは、土地・建物の使用者・権利者が行政や民事裁判で、計画道路の立ち退き補償による行政執行や借家立ち退きなどを強制されることもあります。

対して、明け渡しは、立ち退きを決意した後の占有者の意思表示・行動を表す意味で使われるので、「立ち退かされる」ことはあっても「明け渡さされる」という風に言うことは、ないわけです。

立ち退き補償=立ち退き料とは?

立ち退きを求める者には、立ち退いた後のそのスペースを有益に利用する意図があるわけで、その分、現占有者に対しては立ち退き交渉の中で、立ち退いてもらう代償としての立ち退き料を支払うのが、一般的です。

立ち退き補償・立ち退き料とは、賃貸人(地主・家主)が、賃借人(借地借家人)および転借人に対し、立ち退きの際に、賃借・転借人の移転による不利益を補償する意味で支払う、金銭その他の代替物をいいます。

立ち退き料は、立ち退きを求める側の意図を正当と認めるための正当事由として扱われます。この補償費用は立ち退く側の占有者の生活事情を考慮して算定されます。

立ち退き補償は、

  1. 引っ越し代のみで済む
  2. 移転費用・新たな賃借契約経費を負担する
  3. 保証金や賃料などの差額まで補償する
  4. 移転後の営業補償・休業補償や広告費まで保証する

などピンからキリまであります。

賃貸人としては、立ち退く者の「立ち退き補償要求=あらゆる立退き料請求」を鵜呑みにしたらキリがない話です。

そのため、借地権物件の買取相当額や借家(店舗)内の造作買取請求権など、未回収の投下資本を買取することで立ち退き補償・立ち退き料支払い問題を、早期に決着する方法があります。

立ち退き交渉

立ち退きとは、賃借人が建て替えその他の前提としての解体をするため賃借人と行う賃貸立ち退き交渉と、都市計画事業に伴ない行政が立ち退き交渉する公的事業とに分れます。
立ち退きには、賃借人の用法違反による退去要求など、立ち退き料が不要であることもあります。
これらの場合、裁判所による立ち退き命令の判決をもらい、その強制執行をすることで、立ち退き料支払いを0円で済ませることができます。

しかし、これにかかる時間と労力のムダは大きいです。この無駄を金銭に置き換えて「時短」したいのは、東京都内など発展継続中の地域では共通の認識です。
本来、立ち退き料が不要な「賃貸借契約違反」への解除を争う時間の無駄をお金で解決するのが、立ち退き料支払いを前提とした、立ち退き交渉です。

立退き料の内訳、つまり立ち退き補償の根拠は、移転費用補償、居住権・営業権補償、借家権補償の3つに類別できます。

立ち退き料相場=立退費用相場

立ち退き交渉する際には、【立ち退き料相場】を元に、周到なネゴシエーション戦略を展開するのだろうと一般には思われています。

しかし、上記の居住権や借家権に相場がなく、個別具体事情によって補償料が決められるので、結果、立ち退き料相場にも具体的な標準値はないのです。
あえて参考にするとしても周辺の借地料相場くらいです。しかし、借地相場に借地人の家庭事情を加味したりすると、結局は周辺相場とはかけ離れた数値になることが多いのです。

立ち退き料判例でも、【立退料は賃貸期間~当事者の家庭事情までを比較考量し裁判所の裁量で決める】というように述べています。

さらに立ち退き紛争は、裁判外の当事者間の立ち退き交渉、または民事調停や裁判上の和解で解決されるので、判例を数多く分析して「立ち退き料相場を算出」しようとするのは無意味です。
相場分析を試みるほど、現実の立退料相場と乖離した、見当違いな方向へ立ち退き交渉が向かっていってしまうでしょう。

借地権付建物、住宅街の写真。

立ち退き料 判例

立ち退き料判例を見比べていると、底地人や家主(=賃貸人)が借地人・借家人(=賃借人)を思いやるほど、立ち退き料の判例価格が吊りあがっていく事が分ります。

賃貸人の常識は、世間の常識とイコールです。しかし、賃借人および裁判所の考え(=立ち退き料判例)は、世間の常識から完全に逸脱した、非情で偏向した考えが「正論」とされています。

借地契約でも借家契約でもいいですが、例えば、賃貸借期間中、借地借家人のために、権利金もナシ、周辺賃料相場より低額で貸地契約または貸家契約してあげた大家がいたとします。

貸主からしたら、今までの周辺の借地料相場よりもお得な賃貸借の経緯を考えたら、立ち退き料なんて0円がふつーだろうし、支払うにも周辺相場より安くて当然と思います。これは、世間一般も貸主に同調するでしょう。

周辺の借地相場以下で借りてこられたなら、今まで得してきた分、返せとは言わないが、少しはギブアンドテイクのギブを果たせ、というのは常識です。

しかし、借地借家法に基づく立ち退き料判例の考えは真逆。「今まで得してこれたのに立ち退くと、この先、得できなくなる。損する分を立ち退き料で補償しろ」が立ち退き料判例の大多数です。

ここには義理とか恩義とか、日本人の大事にしてきた利他の精神はありません。完全な利己主義が立ち退き料判例の骨子です。

ブラック地主・底地ビジネス】―みたいに報道では地主が悪者にされますが、立ち退き料判例をみれば、「立ち退き市場」は借地人と対ブラック弁護団の弁護士のボロ儲けのマーケットだと一目瞭然です。

借地借家法と立ち退き料判例

お得だからこそ、高値での借地権売却が成立し、賃料が安く借地権の強い=条件のいい物件ほど、借地権価格が高値になるわけです。

しかし、今までの低賃料が却ってアダとなるような立ち退き料判例が積み重なる事は危険です。安い賃料で貸地契約してた善意の貸主ほど損をするのが、立ち退き料判例の示す借地借家法の歪んだ実態です。

不動産賃貸が、取引態様を定期借地権住宅や定期借家契約に移行して行っているのも、借地権・借家権を忌避している証といえます。

東京都心部の土地所有者が、土地の効率的な利用を図るための高層化計画に乗り遅れないよう、借地人に更新拒絶と立ち退きを求め紛争化する案件も更に増えています。

立ち退き紛争は、底地を所有する地主から借地権物件を所有する借地権者へ、借地契約の更新拒絶を理由とした建物収去・土地の明け渡しを求める裁判として進められます。

立ち退き正当事由

そして、その争点は、地主の申立てた更新拒絶に正当事由があるかが問われます。どんな感じで、裁判所が借地権更新拒絶に正当事由を認めるかはRETIOのページが参考になります。

こちらの立ち退き正当事由の判例のまとめページ〔契約の解除・解約申入れの正当事由・立退交渉 – RETIO〕では、PDFファイルの〈注釈文〉を読むだけで、なるほどーっと理解できます。

( 更新拒絶の参考記事として〔旧法借地権・旧法賃借権とは―旧借地権の借地借家法へのメリット・デメリット〕もお読み頂けると幸いです。)

土地の賃貸借期間が満了しても借地権者は法定更新で保護されます。今だに借地権が強力な威力を持つ新借地借家法施行以前の旧借地法契約での土地賃借人の権利は絶大です。

借地借家法の正当事由

底地人は老朽化による立ち退きを求める解約か更新拒絶に借地借家法の正当事由があることを証する必要があります。

最近の判例では、

上記RETIOの〈注釈文〉をザーッとみるだけでも、底地人が立ち退き料を提供することで正当事由が補完され借地契約の解除が認められる

ようになっています。

東京都内の建て替えニーズと立ち退き

東京都内や横浜・川崎など日本経済の中枢を担う大都市の〈高度利用地区〉では、老朽化建物について公共の福祉のためにも建て替えニーズが必要であるという風潮があります。

高度利用地区―東京都高度利用地区指定方針及び指定基準

ちなみに立ち退き料・移転費用には次の要素が含まれます。

  • 引越し費用(運送費、梱包費、諸届出予算、営業再開の諸費用)
  • 移転先取得費用(転出先物件の敷金、保証金、仲介費用など)
  • 開発利益の分配(開発され地価上昇した利得を借地人にも配分)
  • 事実上喪失する利益の補償(居住権、営業権、休業損失、減収)
  • 差額賃料(移転によって増額した家賃との差額)
  • 消滅する利用権の補償(借地権・借家権)

旧借地借家法正当事由

最新の借地借家法の立ち退き料判例は、東京都内の裁判では大都市化のニーズを踏まえ――
地主側の正当事由〔所有する貸宅地を高度利用すること〕は、社会経済上の利益になり、立ち退きに損失もない借地人は社会の利益を優先すべきでそれに立ち退き料の提供は要しない。
――という判旨も出ています。

介護認定の高齢者

立ち退きとは、裁判の長期化も考えると高齢者借地人にも負担が大きい活動です。
立ち退き正当事由は、貸主借主の建物必要性、周辺状況、他の賃借人の有無などにも左右されます。
まだまだ立ち退き料判例のうちでは〈立ち退き料不要判例〉より〈要・立ち退き補償判例〉のほうが多いです。

しかし――
老朽建物を巡っては都市開発の目的から存続が厳しくなるし、過去にも危険建物として使用必要性を否定され、立ち退き料の提供を要せずに立ち退き正当事由を認めた判例
――も増加しています。

【借地権建物で、木造建築かつ老朽化した建物は、周辺の中高層ビルとの調和を乱し、地域の市街地化が遅滞する原因となるようなら、立退料不要もしくは小額の立ち退き料で明け渡しが認められる】
――と、旧借地借家法の借地権によって、延々と土地活用を塩漬けにする行為が公共の福祉と秤にかけられるかのような場面も見受けられます。

空き家対策法ができ、老朽建物に対する行政の見方が厳しくなっている昨今、単なる居住だけの借地権者は現行の立ち退き正当事由に圧されて存続が更に厳しくなっていると考えられます。

(本文、終了)

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※追記:リフォームモニターは終了しました。※

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