借地権返還と借地権権利金―賃借権放棄×更地返還・前払賃料の解説

借地権返還

借地権返還を無償で申し出る借地権者が増えているそうです。最初は地主から立ち退き料を貰えると待っていたのに、地主のほうは借地権にそれほど興味を示さない、そのうち借地権者が根負けするという事情。

東京都内でもオリンピックに恩恵を受けない「不人気区」は人口減少して足立区や葛飾区では空き家対策法による空き家条例で真剣になっているご時勢、地主も立ち退き料を払ってまで借地権売買に積極的になる気力がないのでしょう。

借地権放棄による無償返還

相続人にとって、同じ東京都内の借地上の建物でも、商業地域のオフィスビルならば賃料収入の見込める〈ひと財産〉ですが、戸建ての借地住宅など価値より面倒さの方が勝る〈負の財産〉といえます。

他に家がある人には、老朽化し管理維持に金のかかる厄介な建物でしかなく、地主への高値での借地権売却の夢を見続けるより、今この時点で借地権放棄した方が精神衛生上も楽です。

借地権返還と建物買取請求

借地権返還を無償で申し出ると地主から原状回復(借地の更地返還)を求められ、解体費用を工面できない借地人は「建物買取請求権=借地権買取請求権を行使せず、無償で返還してやるってのに!!」と憤ったり、悩まれるそうです。

★実際には、建物買取請求権は借地人都合で行使できるものではありません。また、地主の言う「借地の更地返還」の要求も正当と言えば正当です。

借地権権利金

借地権を設定する際には借地権権利金および前払賃料という資金の受渡しが借地人・底地人間で行なわれます。以下はそれら借地権権利金に対する解説です。

借地権建物のデザイン

土地を借り借地権を設定する際は、借地人から底地人へ、借地権権利金(敷金・保証金)の名目で金銭の授受が行なわれます。

これらの一時金は地方慣行によって名称が混在しています。東京都内を中心とした首都圏では借地権権利金関係の扱いは以下のようになっています。

敷金とは?

敷金とは借地人が借地権設定契約に基づく債務履行の担保目的として底地人に預けられるもの。

将来の延滞地代・建物収去費用・遅延損害金を予め予定して預かるお金です。

契約終了時にこれらの不履行があれば差引いて、土地明け渡しを停止条件に借地人に〈返還〉する一時金です。

保証金とは?

保証金も底地人の一時預かり金です。

保証金には、敷金的な意味の他に〈金融〉的なニュアンスをもつものもあります。

大東建託さん等の開発業者が地主を説得して、そこにアパートを建てたりコンテナ倉庫業などを始める場合の〈建設協力金〉のことです。

これには金銭消費貸借契約の意味を持つものと、ジョイントベンチャー・事業協力として行なうものの2種類があります。

借地権権利金とは?

借地権返還する際に借地人vs地主間で「借地権権利金を返して!」「・・・はっ?」と問答になるケースがあります。

借地権を返還する借地人の多くが、相続で借地権を取得し、契約時の事情を理解していないために、借地権権利金と敷金を混同してしまっているのでしょう。

借地権権利金は底地人がもらえるお金。

借地権権利金は、借地権者への返済義務のない資金です。借地権設定の対価の意味合いです。

賃料の前払い的性格の資金として受取ると、支払い賃料は、実質賃料から権利金の償還額を差引いて計算されます。

前払賃料

前払賃料とは権利金と保証金の中間的な資金。

借地権の権利金が発展して、前払賃料という権利金と保証金の中間みたいな制度が〈税法〉上のシステムとして10年位前から取扱われるようになりました。

前払賃料方式の特徴

前払い賃料には、事業用定期借地権を採用する場合に以下の特徴があります。
【重要】
  • 法人・個人、用途・地域の限定がない。
  • 事業用定期借地権の期間を20年として前払い賃料を10年分とするなど前払賃料の支払い期間は自由。
  • 期間途中の契約解除では、残りの前払い賃料は借地人に返還する義務がある。

調査員イメージ

前払賃料のメリット

  • 底地人に債権保全の心配がなくなる。
  • 底地人は期間満了時に返済用の資金を用意しなくて済む。
  • 借地人は賃料を前払いしているのだから、敷金・保証金のように〈現金を寝かす〉ことがなくなる。
  • 借地人は一括課税されなくて済む。
  • 借地人は投資効率が向上する。

定期借地事業の特徴 – 国土交通省

借地更地返還

借地契約貸地契約)は、契約違反の解除、借地契約期間満了、借地権買取請求などにより終了します。最近は、借地期間途中で借地人側の事情で中途解約を申し入れてくる借地権返還が増えています。

借地権を返還してくれる事、すなわち土地の価値の6~9割を奪っていた借地権放棄は、地主にとっては土地価格が正常に査定される状態に回復する嬉しいチャンスです。

しかし、上記の通り地主が強硬姿勢で「借地更地返還」を主張すれば、借地人側に更地返還のための解体・整地費用が賄えず、借地権の返還ができなくなってしまいます。

更地返還ができず借地返還を断念するケース

せっかく賃借権放棄をしてくれそうなのに、更地返還をするための解体費用がない事で断念されてしまうのは、有効な土地活用を目指す地主としてはもったいない事です。

更地返還をする費用が捻出できないという借地人からの相談を受けたら、古家付き土地を購入したものとして、建物の立ったままの現状有姿でも受け入れて損はありません。

借地の更地返還と借地権放棄の理由

昨今の借地権放棄には、「借地人に介護施設入所の必要が起き、子供は独立して別居していて、借地建物を所有する意味がなくなった」という理由が非常に多いです。

昔は、借地人死亡で相続人が借地権放棄をするのが一般でしたが、それが死なずに「介護施設に行く事」に変わったのは、医療の発達による「長寿命化」が原因でしょう。

(借地人だった夫が死後、老妻は子供が引き取るケースもあります)

借地権放棄

借地人にも欲のない人がいて借地権放棄を無償で申し出る事が増えています。そうした時、底地人は、強行に更地返還を要求しなくても「損がない」事を弁えておくべきです。

そして、無償での借地権放棄を申し出た借地人には、最大限の利益を与えてあげられるよう地主としての懐の深さを示してあげる事が大事です。

世の中には、底地ビジネス―ブラック地主で紹介したような、人権を盾に住みたくもない築古物件を占有し続ける自称「弱者」の借地人もいます。

自分の土地の賃借人がそんなヤカラでなかった事に感謝すれば、借地権放棄を申し出る借地人には支払ってあげられるだけの明渡料を計算してあげても「損はない」です。

借地権割合による賃借権売買価格と賃借権放棄の差額

借地の更地返還をして貰わず、老朽建物つきの現状有姿のままでも充分「損がない」事の理由は、借地権放棄をしてもらえるだけで自由な土地活用ができるようになるのは上記のとおりです。

借地権放棄をしてもらえるだけでありがたいのは、特に東京都内23区や横浜・川崎など借地権価格の高額な地域の土地所有者です。

そもそも正規に賃借権売買して土地の借地権を消滅させるとしたら、借地権割合に応じた資金を用意しなければなりません。

東京都内なら借地権割合は7割以上の地域が多く、坪100万円はすると考えると、50坪の土地の賃借権を買取るなら3500万円くらい必要になります。

前述の通り、借地権権利金は貰ったものとして返済義務はなく、純粋な借地権割合で計算した借地権価格がこの位になるという事です。

借地権放棄、つまり無償での借地返還をして貰えるなら3500万円丸々儲けになります。でも、それではほんとのブラック地主です。

借地権の計算に場所的利益を加算する計算方法

「老朽住宅だから建て替え費用ぶん損をする」と言うのもあります。でも、老朽化住宅にも借地権の場所的利益と言うものがあります。

借地権の場所的利益とは、借地が更地だったらを仮定しての借地権価格の加算方法で、更地価格の5%~20%位と見る判例が多いです。

例えば借地建物が査定0円の廃屋でも、場所的利益が10%位あるとしたら、借地権放棄をしてくれる借地人には、坪10万円くらい、50坪なら5百万円くらい支払ってあげても1円の損もないわけ(とする借地権価格の加算計算方法)です。

借地権返還の対価として払って損はない計算例

例えば、東京都世田谷区なんかは1区だけで世田谷ナンバーができる位、広いし人口も田舎の県丸ごとより多いです。

だから、地価も同じ世田谷区内で倍近く変わります。日本中知らない人はいないだろう「下北沢」なんかは坪330万円以上で更に高騰しています。

対して、世田谷区の中では外れで東京市部の狛江市に隣接した世田谷区喜多見などは108万円です。下北沢と比べると3倍の土地価格の開きがあります。

この喜多見で、無償で50坪の借地権返還してくれる借地人がいたら、上記の「場所的利益10%くらい」に照らし合わせて、「5百万円」は払っても損はないわけです。

ほんとに借地権買取をするとなると、借地割合が7割でも、「3780万円」は払ってあげなきゃならないわけ、だからです。

これを「無償じゃだめだ、借地は更地返還しなきゃ許さん」なんて言ったら、ほんもののブラック地主と代々呼ばれる事になります。

(本文、終了)

★☆★東京~神奈川で物件を探しています。★☆★

gold

※追記:リフォームモニターは終了しました。※

リフォームのご質問・ご相談は、facebookのメッセージから受け付けます。 急ぎで作ったメッセージやりとり専用ページです。→【リフォームQ|facebook】 物件売却希望の東京~神奈川以外のかたは、今後は facebook リフォームQ へお願いします。 (2017/01/24)