再建築不可・既存不適格〈道路と土地の法律を学習しよう〉

【 再建築不可・既存不適格は、私道や囲繞地の入組む住宅密集地の袋地・極小地の権利保護と欠陥建物を防止する、法律の結果です。容積率や接道義務を遵守し評価審査に沿った再設計により、建替えは可能になります。】

住宅密集市街地の再建築不可物件と囲繞地通行権

住宅密集市街地などでは民家と民家の間をすり抜けて公道に出るような、細路地・裏路地を道路に使うライフスタイルが当り前のように定着していますが、法律によって細路地ではなく普通幅の道路を開設して、そこを通れるよう工夫することも可能です。

再建築不可物件や既存不適格住宅は、人口が集中した地域にあります。交通アクセス等の利便性に優れていたから、人が多く集まり住むようになったのに、老朽化した建物を建替えられないことで不便を感じ相続放棄がおこり、せっかくの一等地に空き家が生まれます。

横浜市戸塚区の密集市街地風景。

東京23区や横浜・川崎の私道トラブル

東京23区や横浜・川崎など大都会の、ほんらい高額で取引される不動産が空き家となって、国策の空家法で撤去されるのを待っている状態は、宝の持ち腐れどころか国益の損失にもつながります。

以下は、混雑した住宅街でよくある囲繞地通行権や通行地役権のこじれでおきる私道トラブルなどについて相談される質問などをまとめた文書です。何かの参考になれば幸いです。

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私道トラブルに基づく再建築不可物件についてのQ&A

住宅地の隣人同士、意見の相違は当り前。

(質問)幅50cmの自宅通路が不便。隣家に囲繞地通行権を認めて欲しいが?

(回答)袋地の要件は、「四方他人の敷地に囲まれ八方塞がりの土地」と限定されているわけではありません。細い裏路地を通れば公道に出られても、不便さを受忍し続けるより、囲繞地通行権を認めてもらったほうが健全です。

50cmの裏道では自転車を止めたら宅配便も届けられない。日常生活に重要な支障といえます。こういう場合の袋地所有者には、他人の敷地を通行する権利は認められます。

また家の裏側に急斜面があって、そこを「通路として通れないこともない」としても、隣家の敷地を通る通行権は認められます。急斜面や崖を通って、出勤や帰宅を繰り返すのは苦行であって、一般的な日常生活とはいえないからです。

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(質問)旗竿地の自宅裏手の住民が私道を設置した。通行権を認められるか?

(回答)上記のとおり、四方囲繞地の孤島のような取り残された土地でなく、細道を所有している袋地所有者にもその周囲を囲む敷地を通る権利は認められます。

でも、現状で旗竿地の旗竿部分の自分の私道を通れば公道に至れるのに、利便性だけで他人の私道に自己のための私権を設定することはできません。長い間、徒歩での通行で充分な生活ができたのだから、他人の私道の通行権を得て他人に余計な負担をさせるのは法律では不可能ということです。

囲繞地所有者の損害

囲繞地通行権の範囲は、袋地の位置・用法・形状と隣地所有者との利害関係や得失を考慮して、具体的な生活事例を鑑みて判断されます。囲繞地を通る権利は法律上当然に発生するもので、当事者の合意は不要ですが、社会通念上の妥当性、地理的状況、通行権者の必要性、囲む土地の所有者の損害レベルを測って合理性の上で決められます。

囲繞地所有者が反対しても裁判所が決定しますが、通行権者の「好み」ではなく、囲繞地所有者の「損失」が最重視されるのは当然です。

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近所が気になるのは密集市街地の特徴。

(質問)袋地借地人は貸主である地主に囲繞地通行権を行使できるか?

(回答)借地権者は地主の所有地を通行する権利があります。そして、地主は袋地を作った張本人になるので、他の囲繞地使用者に先んじて借地権者を通行(行動への往来を可能に)させる義務があります。

例えば複数土地を所有している地主が私有地の中の袋地の借地人に、最初に使用権を与えていた自己所有地に建築物を新築するから別の私有地を通れ(通路を変更しろ)というのは許される理屈ではありません。

裁判所の判決と競売でローン地獄の自宅が売れた。

判例=賃貸借契約上の効果

判例でも、公道に接する一筆の土地所有者が開口部分を自ら使用し、奥の土地を賃貸した場合、賃借人は「賃貸借契約上の効果」として、賃貸人使用地を通行できる、としています。

上記は、土地を貸した地主に囲繞地通行権を使用できるとしているものです。自分の土地の貸主ではなく、土地を取り囲んでいる関係だけの囲繞地の所有者に対しては、事情が違います。

民法210条に定める公道に通じない土地であることという袋地の考え方も厳しいものになります。そして、囲繞地所有者を第三者とする対抗要件として登記があるなどが重要になります。

(質問)通行地役権が未登記でも第三者に対抗できるか?(黙示的地役権)

(回答)第三者が背信的悪意者(事情を最初から知っている人)なら対抗できますが、登記の欠陥を主張する利益を有する善意の第三者には、未登記の通行地役権は対抗できません。

未登記でも対抗できる例として、第三者が通行地役権としての私道利用を黙認していた期間があったとか、土地購入価格が極端に安かった、つまり他人の地役権が設定されているから低価格と想像できるなど、登記の欠缺を主張する正当の利益を有しない場合などです。

建築契約は重要事項説明完了後、を示す図

通行地役権があると判断

黙示の合意、契約書がなくても暗黙の了解があったとする、過去の通行事実の積み上げを裁判所は評価します。

黙示的な地役権が認められるケースとしては、通行地の所有者が自分の土地を分譲し、袋地を誰かに売却したさい、その通路敷所有権を分割譲渡したように客観的に見え、暗黙のうちに設定された通行地役権があると判断できるような場合です。

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道路法・都市計画法がややこしい地域の法律と許可を知る

また、国道などの公道に面した店舗兼住宅の所有者等には、家の前の道路に関する利用制限の有無や、許可による緩和策などを知っていると知らないとでは、ビジネスライフに支障を来たしたり、思わぬ得をしたりと大きく格差が開きます。

以下は、都市計画法に定める用途地域のうち、商業地域・近隣商業地域・準住居地域などの公道沿いの店舗オーナーなどから聞かれるよくある質問を紹介しています。

近隣同士の理解しあう討論が重要。

容積率制限や接道義務と、防火地域の特例・瑕疵担保責任

建築基準法は建物の安全・防火防災を意識した法律であり、都市計画法の準防火地域などの建築物に特別な制限をしています。

建築基準法には、都市計画法の規定を受けて、防火地域内の建物に関する制限が定められます。

居住者による失火・漏電・ガス漏れがあっても、外部に延焼しないよう建物内部を不燃化し、貰い火のないよう屋根・軒裏などを不燃化する、等の規定です。

細道は救急車両通行困難と解説した画像。

容積率制限や接道義務により災害から住民を守る市街化計画を策定

また、容積率制限や接道義務を課して、建築物に火災が発生しても住民の避難が容易になるよう地域計画を想定したものです。

防火地域とは、都市の不燃化を進めるために定める地域です。建築物が密集している地域では火災発生の際に延焼が発生しやすいため、延焼防止の対策が必要です。

建築当初は確認申請がおりたもののその後の改築・増築で、行政が防災上期待する容積率や接道義務を満たせなくなってしまった建築物が既存不適格物件、再建築不可物件となるわけです。

防火地域内の建築物の規制

防火地域内では、階数3以上で延べ面積が100平米を超える建築物は必ず耐火構造としなければならず、それ以外も準耐火建築物としなければなりません。

防火地域内の建物は、耐火建築物・準耐火建築物に限られます。しかし、これにも例外があります。

延べ面積が50平米以内の付属建築物で外壁軒裏が防火構造。高さ2m以下の門塀。高さ2m以上の門塀で不燃材料のものは耐火製品でなくてかまいません。

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防火地域内の建築物の特例

防火地域内の建築物は、これだけ厳しい延焼・耐火性能を備えた建物なので、緩和措置として、隣地境界線に接して建築できるという特例があります。

これは防火地域が繁華街などに設定されるため、地価の高いこの地域で敷地面積を一杯に使って建物を建てて使いたいというニーズに応じた特例です。

建物・敷地・道路の法律を知り、接道義務他の基準クリア

建築基準法は建物と敷地の安全や衛生環境を守るため多くの規定を定めています。

そして建築基準法に不足している街造りに関する法令を補完するために都市計画法があります。

都市計画法は人々が生活しやすい環境を作るため、特定の目的に対応して地域・地区を定めます。

横浜市の住宅密集地、上空からの撮影画像。

その中の防火地域・準防火地域内の建物に必要な性能の具体的基準は建築基準法が規定しています。

この規定に反する現状は、再建築不可物件・既存不適格建物として、減築などの改善をしないと建替えができません。

都市計画法では12種類の用途地域を定めています。各用途地域内で建てられる建物の用途は建築基準法が定めます。

つまり建築基準法と都市計画法は補足しあい、相乗効果をあげて存在しているといえます。

都市計画の区域区分と建築制限、建基法の集団規定と単体規定

建築基準法には特定の地域にだけ適用される規定があります。これを集団規定と呼びます。集団規定の反対は単体規定、これは全国共通の法令のことです。

都市計画区域の指定

都市計画法は、日本の国土を都市計画区域(および準都市計画区域)と都市計画区域外に区別しています。

都市計画区域外は、都市計画とは無関係、自然のままの土地(山野や原生林)で残しておこうという主旨の区域です。

都市計画法は、都市計画区域(準都市計画区域)内の都市計画を考えるため施行されました。

都市計画区域は、既成市街地を含む地域や、市街地が今後開発される見通しのある都市として整備・開発・保全をする区域です。

対して、準都市計画区域は、「都市計画区域外ではあるが既に相当数の建築物があり宅地造成が行われた区域です。

そのまま放置すれば将来、メチャクチャな無法都市になるか廃墟になるか、とにかくろくなことにならない地域のことです。

そこで都市計画区域外であっても「準都市計画区域」と名づけて、用途地域などの都市計画を用いて土地利用の整理整頓だけを目的に指定されます。

区域区分と建築制限

都市計画は都市計画区域の指定をしたら、その都市計画区域内を利用目的にしたがって区分けします。これが区域区分です。

区域区分

都市計画区域内と都市計画区域外の区分けのあと、都市計画区域内が、「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分けされます。

市街化区域

市街化区域は既成市街地または10年以内に市街化すべき区域です。

市街化調整区域

市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき地域です。農地や山林が残る地域や漁村などです。

都市計画法にもとづく用途地域と建築物の制限と対策など

バスが通り難い狭隘道路を説明した画像。

都市機能を更に高める都市計画区域と非線引き区域

都市機能を更に高める都市を作るため、都市計画区域に市街化を徹底的に進める「市街化区域」を定めます。

市街化調整区域は改めて指定するのではなく、市街化区域を定めたら、後の残りの区域は全て市街化調整区域になるのです。

非線引き都市計画区域

これを「線引き」といいます。線引き、つまり市街化区域の指定は時代が進み、人口が増えるとどんどんと「拡大」していきます。

その市街化区域の拡大、線引きについて、指定しないまま放置しておくこともあります。

都市計画区域内で、市街化地域と調整区域を指定しないエリアを「非線引き都市計画区域」と呼びます。

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市街化区域、市街化調整区域の制限と都市計画法

市街化区域は原則、建築物を建てることに制限はありません。代わりに用途地域の指定がされて、そのルールに縛られることになります。

市街化調整区域の建築制限

市街化調整区域は、過度な建築を抑制する地域ですので、厳しい制限があります。農林漁業者の住宅や農林水産業に必要な施設も知事の許可が必要です。

一時、違法な農地転用や「農家住宅なら地目無視OK」という法律の隙を突いて、農家の節税対策用みたいなアパートが農村地帯から発展した新興都市に流行しました。しかし、これは「農家資格者」つまり百姓のせがれしか転売や建て替えができない不当な建物でした。

この農家住宅には、不動産業者でさえ知らずに手を出して大きな負債となってしまった人もいます。もちろん一般の住宅は建築できないし、一般の人は「建物自体」を変な手続きで購入はできたとしても、建て替えや転売は100%不可能なものと考えて差し支えありません。

用途地域と建築物の用途制限

都市計画法は12種類の用途地域を定め、建築物の用途によって建ててはいけない場所を定めています。

用途地域の種類と建築できる建築物

都市計画法では12種類の用途地域のうち、商業系と工業系の5種類の用途地域の内容が以下のとおりです。

近隣商業地域

近隣住民に対する日用品の供給を行うコンビニや美容室、アパレルなどのショップが主になっている地域。住宅街も近いためディスコやキャバクラのテナントビルは建築できません。

商業地域

商業その他の業務利便を増進するため定める地域です。風俗やキャバクラ、ディスコ・キャバクラの営業も可能な地域です。

準工業地域

近隣に住宅地のある地域に指定されるので、危険物や爆発物などを製造する工場はのぞいて、小規模工場などが建設されます。

工業地帯

工業の利便を増進する地域です。幼稚園や小中高校・病院・ホテル・映画館・ソープランドなども建築(開業)できません。

工業専用地域

工業を専門としたビジネスを発展させる地域。ここで工場以外に建築できるのは、神社・教会・寺院、診療所、公衆浴場、保育所、自動車車庫、自動車教習所などの経営にかかる建物だけです。

用途地域と建築物の用途制限―低層住居専用~準住居

土地が余る再建築不可の地域の画像

用途地域の種類と建築できる建物は以下のとおりです。

第一種低層住居専用地域

低層住宅つまり庭付きの一戸建て住宅が集まる地域環境を保護するために地域を指定するものです。

幼稚園、小中高校、図書館や寺社や保育所は建築できますが、その他は小規模コンビニも建築できません。

第二種低層住居専用地域

建築できるのは、第一種低層住居専用地域に建てられるものに加えて、コンビニくらいで、あとは建築禁止です。

第一種・第二種中高層住居専用地域

第一種は、低層地域で建築できる建物に加え、大学・病院・喫茶店などが建築できます。

第二種は、これに加え、会社事務所やファミレス、ファストフードショップなどが建てられます。

第一種住居地域

中高層住居専用地域で建築できる施設に加え、自動車常習所、ゲームセンター、ボーリング場、旅館、ホテルなどの中規模以下のものが建てられます。

第二種住居地域

上記に加え、カラオケボックス。麻雀屋、パチンコ屋などが建築し営業できます。

準住居地域

道路の沿道として、各種業務の利便増進のため、上記に加え、営業用倉庫。大規模自動車倉庫などが建築できます。

接道義務とセットバック―建築基準法でいう幅員4mの道路

建築基準法は道路の定義として道路法や道路交通法とは別の条項を細かく規定しています。

建築基準法でいう道路とは幅員が4m以上のもの。道路法による道路とは高速自動車道・国道・都道府県市町村道をいいます。

防災上、建替え不可能な地域の画像。

幅員が4m未満でも建築基準法上の道路とみなすため、現況道路の中心線から水平距離で2mずつ後退した線を道路の境界線としてセットバックと表します。

道路中心線から2m未満で片方が崖になっていたり、川や線路敷きになっている場所はそこから4m後退した線が境界とみなされます。

この4mの範囲内には、建築物を建てられず、容積率や建蔽率の計算上も敷地面積に含められません。再建築不可物件を建て替え可能にするみなし道路の理屈はこの4m幅員がネックです。

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空地付き建築物への建築審査会の同意と、再建築不可物件のセットバック

接道義務

幅員4m以上の道路に最低2m以上接していなければ、その敷地には建築物を建てることができません。

この道路は私道でも可能です。私道によって建築物の敷地が接道義務を満たす場合、市町村長は私道の変更や廃止を禁止できます。

敷地の周囲に空地を有する建築物他の基準に適合する建築物で交通・安全・防火・衛生上支障がないとして建築審査会の同意を得たものは接道義務は不要です。

道路内の建築制限とセットバック

道路内の建築制限を解く方法としては、セットバックがあります。既存不適格の再建築不可物件もセットバックによって、建て替え可能な優良不動産に生まれ変わります。

セットバックが可能な土地は、建築基準法上は道路とみなされるとはいっても、土地所有者にすれば自分の土地に建築物を建て、建築している例が見られます。

私道紛争は自分の財産を増減させる戦い。