貸宅地―相続税を考える時の〔底地〕の名称―評価方法

貸宅地とは?

貸宅地とは、住宅を建てる目的の土地貸し、自用地を宅地として他人に貸すことを意味し、底地と同義語である単語です。
貸宅地の読み方は、「カシタクチ」と発音します。

不動産売買(売却・買取)の場面では、他人に建物を所有させるために貸地している状態を〔底地〕と呼ぶのが普通です。
よって、借地建物付の土地を売買することは、「貸宅地売買」ではなく「底地売買」と称します。

相続税納税で不動産処理を考える時は、底地は〔貸宅地〕という名称で、もっぱら節税のために評価されます。

貸宅地を借りている借地人の借地権のほうが、貸し地している底地人(地主)の所有権よりも土地に有する権利が強く、借地人に相続があるときは〈借地権〉自体が課税対象になるほど、借地権は所有権と同等もしくはそれ以上の価値が認められています。

東京都の密集した町並み

貸宅地駐車場―青空駐車場の土地活用

他人に物を貸して、借りた方が強力な占有の権利を有してしまうのは、不動産だけです。
そして、他人が借りてそこに住むことで発生する借地借家権の類の建物土地の賃借権・借地権は多くが所有権の価値を半分以下にする極端な権利です。

現在、宅地の更地を所有し、土地活用のために貸宅地を考えている人は、貸宅地することで強力な借地権が生まれ、その土地を拘束してしまうことを理解すべきです。
対して、駐車場利用としてなら借地権は発生しません。

駐車場も青空駐車場であれば、設備投資不要で始められ、駐車場として貸した契約者になんの権利も発生しません。
その駐車場を借りて、駐車場住所で車庫証明登録をした契約者のために、終生、駐車場経営を続けなければならない義務は法律上ないわけです。

違法駐車が駐車場(私有地)でされていても、警察は取り締まってくれません。
よって青空駐車場の場合、有象無象が集まる東京都内や横浜などの大都会では、タイムズのような駐車場管理システム会社との契約が必要になります。

しかし、地方の商業地であれば、地元で違法駐車を繰り返せば、どこの誰だかすぐにバレますから、さほど悪質事案がありません。
貸宅地よりも駐車場の方が、小回りが利く有効な土地活用になります。

貸宅地評価は更地価格-借地権割合

貸宅地は、土地上に、借地権という非常に強い権利が居座っていて、自分の土地ながら自由に活用できない不動産です。

だから、借地権が高評価・高価格であるぶん、貸宅地の評価・価値は低く、よって税法上の評価価格も安くなります。

貸宅地評価(売買価格)計算方法は、更地状態の評価額を路線価方式や倍率方式で算出します。
そこから、借地権評価額を差引いた残額が底地価格、つまり貸宅地評価額となります。借地権評価額は更地に借地権割合を乗算します。
更地価格から借地権価格を差し引いた残額、つまり借地権割合が9割の土地ならば、貸宅地評価価格は土地代金の1割分の値段がその基本的な査定価格になります。

借地権割合

借地権割合とは、その「貸宅地上の建物価格=借地権価格」を決定するための指標となる、その土地自体に対する借地権の支配割合を意味します。
貸宅地評価額は、「土地価格-借地権割合の残額」であるという認識で、市区町村の借地権割合公開によって事実上、公表されているといえます。

借地権割合は底地人と借地人の相対価格ではなく、各市区町村ごとに一定割合が決められています。借地権割合は路線価図にA~Gまでのアルファベットで記載されています。

豊島区池袋の借地権割合=9割か8割

コチラのリンク先は池袋駅の周辺の路線価が示されたページ。道路の位置に当るところに数字とアルファベットが〈1500A〉とか〈2000B〉とか、記されています。

池袋駅周辺の路線価

池袋の賑わいっぷりからも想像は容易いですが、

超人気スポットの池袋界隈は、企業が借地上にボンボン建物を建てて、商業ビルで埋め尽くされています。池袋駅周辺の借地権割合は土地価格の9割・8割

の価値があるってことです。

逆にいえば、その土地の貸宅地評価は1割2割しかないことになります。
土地の価値より、借地権の価格のほうが高い〈大都会〉の典型です。渋谷や新宿もこんな感じです。

葛飾区柴又の借地権割合=7割

対して、コチラは葛飾区、男はつらいよ・寅さんでお馴染みの柴又帝釈天・金町浄水場辺り。

葛飾柴又帝釈天辺りの路線価

京成金町線・柴又駅から帝釈天の本殿に至る参道だけは土産物屋さんが連なりますが、それ以外は観光名所も何もない。

柴又駅周辺は低層建物ばかりで〔あえて借地してまでビル建てる程じゃない〕地域

ですから、ここら辺の路線価を見ると、借地権割合は〈C=70%〉です。
つまり貸宅地評価割合は、3割あるということです。

同じ葛飾区の亀有公園前派出所(両さんのいる架空の交番)のある亀有公園辺り、亀有5丁目近辺も借地権割合はCランクです。
実際のいわゆる亀有派出所は、JR亀有駅のロータリーの中にあります。

江東区のベイエリアや中央卸売市場の借地割合

高層ビル街、近代化された大都市になればなるほど借地権割合は高くなり、貸宅地評価は下ります。

ついでに三井不動産をはじめ日本を代表する大手不動産業者が作り上げた、江東区東雲や有明を中心とする東京ベイエリアの高級・高層マンション街の借地権割合はいかほど?と確認してみました。

予想に反して、超人気エリアである江東区の借地権割合は〈Cランク〉が多かったです。

これは新木場をはじめ江東区が埋め立てでできた〈元海運倉庫街〉だからです。
貸宅地であっても、借家権の発生しない商業利用であるため、借地権割合が抑えられるという理由です。

中央区築地から江東区豊洲に大規模移転される〈東京都中央卸売市場〉の跡地の借地権割合と貸宅地評価もこれに似たような評価割合が設定されると考えられます。

貸宅地契約

土地上に賃貸不動産を建てたり、前記事〔等価交換マンション―等価交換方式でアパマン経営〕のように〈等価交換方式〉を使ったりするのと同様〈貸宅地経営〉も相続税対策の一環で行われてきました。

駅近の繁華街にまとめて土地を持っていた農家地主がデベロッパーと組んで、駅周辺を丸ごと開発して地上げする場合の〔貸地契約〕については、

その成功例を主に川崎市内の開発で、私も何度も見てきています。

なので、駅近の大規模な底地人(貸地人)の貸宅地経営が儲かるのは構造上当然だと分ります。

しかし、不動産投資として積極投資するならともかく、200坪未満しか土地を持っていない状況で、そのなけなしの土地を節税のために他人と貸宅地契約してどれだけメリットがあるのかは疑問です。

大田区の田園調布や横浜の緑区の高級住宅街に行くと、200坪程度の邸宅ってけっこうあります。

つまり、贅沢に使うなら〔家一軒しか建てられないような敷地しか持ってない〕のに、僅かな節税のためにと貸宅地契約し、将来の土地の自己利用権をほとんど放棄して大丈夫なのかな?という意味です。

大規模地主なら、複数者に貸宅地すること、または土地の一部を駐車場にすることで「分散投資」できます。
しかし、わずかな土地しかない地主が、その土地財産の全てを貸宅地として一極投資したら、その貸宅地契約でトラブルになれば、損失回避する道がないので「全損」になってしまいます。

借地権の強さと貸宅地契約による束縛

借地権は本当に強力です。借地借家法改正前の平成4年以前に、この〔節税のための貸宅地〕をしてしまった底地人さんが、〔旧借地法の借地権〕によってがんじがらめになっていることは有名です。

住宅ローンの借金による担保設定で金縛り。

旧法では借地権が徹底的に保護されていて、法律改正後の、この今、現在でさえも旧法借地権は通用しているのです。

小規模な土地しか持っていない人が、積極投資ならともかく、たかが相続税の節約のために他人に7割近く権利を渡していいものか?
・・・という感じがします。

旧借地法と改正借地借家法の貸宅地の違いを比較すると次のような違いがあります。

  1. 貸宅地契約存続期間
  2. 更新後の貸宅地期間
  3. 建物朽廃の取扱い
  4. 更新拒絶正当事由

などです。

貸宅地契約存続期間

借地権の存続期間は、旧借地法では堅固建物30年、非堅固20年、これより短い借地期間は〈弱者たる借地人に不利〉とみなされ、堅固60年、非堅固30年という法定期間が適用されます。
旧法時代から貸し地(読み方:カシチ)している都内の地主は、今後も貸宅地状態を永続的に受け入れなければならないことになります。

これは、〈期間の定めのないもの〉という、定義に当てはめられて起こる底地人にとっての災いでした。
新借地借家法では一律に30年の存続期間が定められました。しかし旧法を適用してる借地建物が東京都内23区の9割以上と言われています。

更新後の貸宅地期間

更新後の借地権存続期間は旧法は堅固建物だと30年でしたが、新法は最初の更新時20年、以降は10年と期間短縮がされました。

新法での貸宅地状態の存続期間は、借地権の半永久的な土地支配を食い止め、土地の活性化を促す目的で設定されました。
しかし、私的契約なので地主と借地人が納得すれば、貸宅地契約は継続でき、借地権物件を有する借地人の権利が侵害されるものではありません。

建物朽廃の取扱い

建物朽廃の取扱いについては、旧借地法では貸宅地の存続期間の定めがある場合は借地権が存続しましたが、定めがなければ借地権消滅でした。また、火災消滅の場合、誰にでも借地権の効力を主張できるものではありませんでした。

新法になってからは、建物が朽廃しても契約期間内なら貸宅地の契約状態は存続し、建物が滅失した場合も、2年以内に再建築して(その間は借地権者を証明する立て札を土地上に立て)登記すれば貸宅地契約の効力を第三者に対抗できるようになりました。

更新拒絶正当事由

更新拒絶正当事由の扱いについては、旧法では「土地所有者が自ら土地を使用する正当事由」が必要で、この〈正当事由〉が厳格かつ抽象的でした。
新法では、立ち退き料支払いを「正当事由」の補完とすることができるようになりました。

とはいえ、今だに都内も横浜や川崎も、都心ほど旧法が生きていて、結果、借地権割合が高く、貸宅地評価が低いという格差に、多くの底地人が苦しんでいます。
以上のように借地人の〈弱者の権利〉が強固なのが貸宅地のネックです。

小規模地主には貸宅地はハイリスク

繰り返しになりますが、貸宅地で収益が見込め、リスクを分散できるような駅近で土地持ち農家ならまだしも、〔なけなしの土地をたかが相続税対策の節税テクニック〕として他人にプレゼントしてしまうのは不動産財産としての損失です。

多くても固定資産税の2~3倍程度の貸宅地収入と20~30年に一度の借地権更新料でしか儲からないのが貸宅地です。

土地持ち農家は自分じゃ土地収益をコントロールできないほど莫大に敷地があるから、少ない利益でも「集めれば大金」になって利回りになります。

しかし、小規模な地主が戦略もなく、単なる節税のために貸宅地するのは新法になってからの今でもハイリスクすぎです。

(本文、終了)

★☆★東京~神奈川で物件を探しています。★☆★

gold

※追記:リフォームモニターは終了しました。※

リフォームのご質問・ご相談は、facebookのメッセージから受け付けます。 急ぎで作ったメッセージやりとり専用ページです。→【リフォームQ|facebook】 物件売却希望の東京~神奈川以外のかたは、今後は facebook リフォームQ へお願いします。 (2017/01/24)