法定相続分改正=配偶者・子・親兄弟の法定相続分計算割合、具体例

法定相続分の法改正案に関する報道がありました。
民法900条の配偶者の法定相続分に対する見直しだそうです。

<法制審>配偶者3分の2相続「困難」 意見公募で反対多く – 毎日新聞

こちらの記事は短く、「妻の法定相続分を2分の1から3分の2まで引き上げる案が審議されたが反対多数だった」ということが記載されていました。

そこで、法務省のホームページをチェックしたら、法律案の具体例(民法(相続関係)等の改正に関する中間試案)が記載されていて、「妻の法定相続分」以外(故人の親・子・兄弟姉妹)のことで興味深いことが書かれていました。

民法(相続関係)等の改正に関する中間試案 – 法務省

法定相続分改正に関しては、他紙の報道でも「妻の法定相続分を2/3にする案」についてだけクローズアップされていましたが、法務省の「相続法制の見直しPDFファイル」に書かれている、その他のことについて以下に解説してみます。

法定相続分計算

法定相続分とは、民法900条条文による、【遺言書がないまま死んだ人の財産を遺族の誰が何%の持分割合でもらえるのか?】という遺産配分の原則ルールを意味します。

遺言書を読んでいる女性の写真

現在の民法における法定相続分計算は、遺族に配偶者と子供がいる時は、配偶者2分の1、子供2分の1づつの割合です。
「被相続人つまり故人」の親、兄弟姉妹には遺言書がなければピタ一文たりとも遺産をもらう権利がありません。

故人に子供がいなければ、妻が3分の2、故人の実の両親が3分の1という計算になり、兄弟姉妹は蚊帳の外です。
子もおらず両親がすでに亡くなっている人が死亡した時は、その故人の妻が4分の3、兄弟姉妹には4分の1が配分される計算になります。
故人に子も妻も両親もいなければ、兄弟姉妹が全ての財産を相続できます。

相続人の範囲と法定相続分 – 国税庁

報道では、この妻と子の相続割合の計算について、妻のほうを「条件付きで引き上げてやりましょう!」という案が審議されたものの大反対され否決、更なる見直しが必要である、みたいに書かれていました。

配偶者の法定相続割合計算

被相続人(故人)の配偶者(妻)と子供との間の、親子の相続取り分の計算なんて、5:5でも6:4でも、どうせ妻(母親)が死んだら子供が相続するんだから割合なんて関係ないだろう?――という感じがします。
しかし、妻と子が実の親子だったら問題ないのですが、そうでないケースがあるから、この民法改正法案が重要になってくるわけです。

具体例としては、故人に「先妻との子」や「内縁の妻または愛人との間の子」がいた場合の相続持分の計算です。
例えば先妻がメチャクチャな金食い虫の浮気性で、故人はそれに愛想を尽かし、離婚して現在の妻と再婚したのだとします。そして、現在の妻との間には子供はいない、という境遇とします。
この場合、先妻には当然ながら相続権はカケラもありません。
しかし、その先妻と故人との間に子供がいたら話は変わります。
現在の民法だと、その子には個人の遺産財産の50%をもらえる法定相続分があるのです。

例えば、先妻とは好きでもなかったのに【できちゃった婚】で、婚姻期間中はセックスレス、荒んだ夫婦生活で夫婦とも借金漬けのサラリーマンだった人が、離婚し、後妻と出会い再婚し、そこから奮起して自己資金ゼロから起業し、妻の支援や内助の功のお陰で、個人資産100億円の成功者になったものの後妻との間に子供はできなかったとします。

この成功者が死んでしまうと、現行の民法の法定相続分計算では、後妻に50億円、そして先妻の子供に50億円が相続されることになります。
先妻の子供が、【離婚した後も故人を慕って交遊し、故人の成功を陰で支えた功労者であった】なんて話なら、「その子に50億円」という法定相続分も当然の権利です。
しかしそうではなく、先妻の子が子であることを利用し、故人の生前にちょくちょく小遣いをタカリにきていたプータローのようなやつであれば、故人を支え続けてきた後妻としては、遺産まで5割もむしられてはやりきれないわけです。
先妻との子に思い入れがあれば、故人も遺言書などで万が一の遺言持分を確保しておいてあげたりするものです。しかし、50億円を持って行くのは、今までタカリに来る以外は疎遠だったプータローであることがたいがいだからトラブルになるわけです。

判例結果のイラスト

法務省の相続法制見直しの審議会では、こういうことを想定して、妻の法定相続分を2/3、子の法定相続分を1/3にする法律改正案を検討しているわけです。

法定相続計算の順位・範囲

この民法改正案は、素人の目からみても、かなり的を射ているように思えます。
反対論として、「いや、逆に先妻(または愛人・内縁の妻)こそが、故人の事業を成功に導いた貢献者で、後妻は金目当てに妻の座を奪った悪女だったらどうするんだ?」という意見もあるでしょう。
法案はそれに対し、改正する法定相続分の条件として、【結婚後に財産が『一定割合』以上増加したこと】と【婚姻期間が『一定期間(2~30年)過ぎていること】を指定しています。

これにより、後妻つまり故人の死亡当時の最後の配偶者は、結婚後、長年の間、故人の為に尽くしてきた、という状況が擬制されます。
よって反対論で想定される、「金目当てで結婚し、100億あった財産を浪費で10億まで食い潰し、結婚10年目で夫が死んだ、悪女の後妻」には、3分の2ではなく、現行法と同じ、2分の1しか相続されないことになり、けっこう公平なわけです。

ただこれに対しても、「夫婦関係が破綻してたからこそ夫は事業に邁進し、成功し、過労でポックリ逝ってしまった場合はどうする!?」という反対意見が出ることが想定されます。
長年の間、仮面夫婦で婚姻期間だけムダに長かった場合、どうするんだ――ということでしょう。

民法(相続関係)等の改正に関する中間試案

しかし、法務省のPDFファイルの5ページ目に書かれている【遺産分割に関する見直し 乙ー1案】には、そのリスクヘッジもなされています。
要約すると、「配偶者が法定相続分を3分の2もらうには、『結婚後2~30年経った後の夫婦が相方・伴侶の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げる旨について合意し』、〝法定形式〟により届け出ることが必要」という条件も付けるようです。

法定形式というのが公証役場での公正証書なのか、市役所への申請なのか知りませんが、結婚後20年もしてから、こういう届出をするなら、破綻した夫婦ではない確立が高いとみなせる、ということでしょう。

法定相続分改正

この民法改正案では、【子供がいなかった時】の配偶者と「故人の直系尊属=親」との相続割合、配偶者と故人の兄弟姉妹との相続割合についても規定しています。
妻と故人の両親との相続割合は、現行法では妻が2/3、故人の親が1/3もらえましたが、改正法案では妻が3/4、親は1/4と、妻の法定相続分が増加します。
妻と故人の兄弟らとの法定相続分も、現行法の妻が3/4、兄弟姉妹が1/4を、改正後には、妻4/5、兄弟1/5となるようです。

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法定相続分には、旧民法時代から何回かの改正がありました。
明治時代の旧法の初期には、「子供が家督を継ぐのだから」ということで、子供が第一順位相続人、第二・第三は【指定相続人】であって、妻には法律上に明記された法定相続人としての地位はありませんでした。
たいがい、親や兄弟が「故人に代わってのれんを守るのだから」という理屈で丸ごと相続して、嫁にはもうしわけ程度しか遺産がいかなかったようです。
昭和に入ってからの改正法では、第一順位は直系卑属つまり子供、第二順位が妻、第三順位が親であり、まだ兄弟の出る幕はありません。
また、相続割合は妻と子供では、妻が1/3、子供が2/3でした。これは、今後の改正法の真逆の割合です。今の時代のように、離婚や再婚が頻繁になされ、先妻の子と相続争いが起るなんて話は、立法者にとって想定外だったでしょう。

そして、故人の親と妻とでは2分の1づつ、親が死亡していた場合に限り、兄弟に相続権が生まれ、その相続割合は、兄弟が1/3、妻が2/3でした。
この割合は、旧民法から新民法に変わって以降も、昭和56年の新民法改正まで続きました。
昭和56年1月1日をもって、旧法・新民法から現行法に変わり、現在に至ります。

配偶者法定相続割合の改正

嫁はこき使われる上に人権もないに等しかった時代を反映した明治の旧民法から、嫁にも兄弟にも法定相続分が与えられました。
かつ、制度の運営上、「兄弟にそれほど相続持分はあげても意味がない」という結論に至ったから、昭和56年の改正で、旧法で1/3もらえた兄弟の取り分が、1/4に引き下げられたのです。

今回の改正案の【配偶者VS兄弟】では、「配偶者4/5:兄弟1/5」になります。
これは、過去記事「ニトリ相続判決」で記したとおり、「大金持ちの場合、親兄弟に権限を多く与えるとロクなことにならない」という実態が、法定相続分の歴史の上で反映されてきているということでしょう。

平成25年12月の民法改正では、今までは非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1だったのが、非嫡出子も嫡出子も同率と変更されました。
これによって、妻がいる男が愛人女性に産ませた、昔の言葉で言う【妾腹の子】の身分が、法律上の実子と同等になり、平等さが担保されることになりました。

今回の民法改正案が再審議を重ねて、実際に運用されると、相続税の増収もあるでしょう。
また、相続不動産においても、現行の、後妻に2分の1、先妻の子に2分の1だと、フィフティフィフティの権利があるからと先妻側が欲をかいて譲らず、不動産が塩漬けになることが多くあります。
これが、後妻側に3分の2の法定相続分がいってしまうと、先妻の子は「持分3分の1だと『自分のモノ感』が薄い」感じがして、物件への執着もなく、早い段階で妻が相応の金額による共有持分買取をして、共有状態が解消されて不動産売買がしやすくなる可能性が「無きにしも非ず」です。
相続税の税収増も見込めるし、非嫡出子の法定相続分の改正も好評を得ていることからすると、今回の法定相続分の見直しについても、早々に法案がとおって民法改正になるんじゃないかと思います。

民法相続分解性と遺産処分

民法の法定相続分改正が不動産売買に及ぼす影響は、妻の所有権割合が圧倒的なぶん、他の相続人の相続争いへの気力が減退する可能性があるという点です。

再建築不可物件はタダでさえ売れにくいものですが、これに相続人間の儲け・欲得がからむと収拾がつかなくなります。
だから、空き家問題が深刻化しているのです。

民法改正となって、メインとなる相続人(妻)の処分権限が強力になれば、他の相続人もゴネにくくなります。
そうなれば、相続人間での持ち分売却もスムースになり、一個の不動産として処分できるスピードも速まるでしょう。

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