明け渡し―土地建物の明け渡し請求~明け渡し訴訟とは?(意味)

明け渡しとは?

明け渡しとは、今まで賃貸借契約(or無償使用)していた土地・建物を所有者・権利者に返還する事を意味します。

明け渡すのが、借地なら建物を収去し更地にして借地契約を終らせる事、借家なら室内を原状回復して家主に鍵をハイと返す事。

明け渡しは、物や人の居場所を移動させて〈渡す〉のではなく、あくまでそこにある不動産・空間の占有権を〈渡す〉ものです。

また、明け渡しとは「空けて」から渡すの意味があります。部屋を空き家にして渡す、土地を空き地にして渡す、など空っぽにして渡す、空け渡しという意味が明け渡しには含まれます。

明け渡しには、「社長の座を明け渡す!」という風に使われることがありますが、これも比喩ではあっても「」という空間の占有を譲渡するものです。

座を明け渡す写真。

明け渡しと引き渡しの意味の違い

明け渡しの類義語に引き渡しがありますが、引き渡しは「金と引き換えに人質を引渡す!」というように、場所の移動があり〈渡す対象が人や物〉でもある点で、明渡しと異なります。

不動産屋の賃貸物件の「引き渡し」は、新借主へ占有権を渡すという点では明け渡し引き渡しは意味が重なりますが、不動産屋は借家人という地位を持つ者本人ではなく、借家権を仲介する役目であるから、引き渡し手続きというのでしょう。

明け渡しと立ち退きの違い

立ち退きは、そこに占有権をもって居住していた人が占有を解除してその場を引き払うという意味では明け渡しと同じです。

ただ「立ち退き」という言葉は、例えば東京都内の公園にいるブルーシート生活者や反原発テント村の人達のように、不法占拠している者がやむなく出て行く時に使用される事が多いです。

ニュアンス的〉には、明け渡しが原状回復して正々堂々と占有を渡すのに比べ、立ち退きは原状回復など関係なく、その場にしがみ付くのを追い払うといった〈違い〉を感じます。

明け渡し請求

借地借家契約において、明け渡し請求の正当事由が判断されるには、賃貸人・賃借人それぞれの利害得失を比較考量されます。

ただ借地の場合、建物を建てて所有しているぶん、場所を借りてるだけの借家契約より明け渡し請求が認められるケースは少ないです。

また土地の明け渡しには、借地権者が相当に不利な状態でなければ借地の立退き料の支払いが地主側に必要となります。

土地を明け渡すと、借地権者の土地上の建物の所有権が無くなるのだから、お金か代替物件を用意するかしないとダメだと裁判所が判断するからです。

しかし、前借地権者との借地権売買の時に、地主に借地権譲渡承諾を貰う為に「賃貸借期間終了したら更新せず明け渡す」と約束までしていた借地権者は判例でも保護はされていません。

建物明け渡し請求

借地借家法は賃貸借契約の借主保護の法律なので賃借人に都合よく出来ていて、貸主の建物明け渡し請求をとおすには高いハードルがいくつもあります。

借家人を保護する借家権が強力すぎるから、最近のアパート・マンションの賃貸借契約は、最初に更新しないと約束させる〈定期借家契約―定期建物賃貸借〉による事がほとんどです。

法律上は家主に正当事由があれば明け渡して貰えるとか、幾つも明け渡しを認める条件がありますが、結局、借家人に立ち退き料を支払わされることになります。

明け渡し請求によって、借家契約を解除し建物を明渡して貰うには、最初に定期借家契約(期限付建物賃貸借)にしておくのがベストです。

唯一、家賃未払いや無断転貸など〈賃借人の義務〉を大きく逸脱した時だけ、建物明け渡し請求が認められます。

土地明け渡し請求

土地の明け渡し請求は借地権の消滅の時には容易に認められますが、それ以外の時は地主に正当事由があっても償金の支払いが求められます。

また、更新拒絶により借地権が消滅したり、借地権の譲渡転貸を地主が拒んだら、借地権者の建物買取請求権借地権買取請求権)に従って、地主は建物を時価で買い取らなければなりません。

これは借地借家法13条1項、および旧借地法4条2項で定められた法的義務です。もちろん借地権の合意解除や賃料未払いによる解除、借地権放棄の場合は建物買取請求権に従う必要はありません。

買取請求に応じなければならない金額は時価ですので、借地権者の高額な請求に屈せず、時価を計算して、妥当な借地権売買価格での交渉が可能です。

明け渡し訴訟

建物明け渡し請求も土地明け渡し請求も、当事者同士の協議による合意解約が成立しなければ裁判―明け渡し訴訟で決着をつけることになります。

判例結果のイラスト

建物明渡し訴訟にいたるケースの多くは、昔からの格安の賃料で訴訟中も占有を続けられ、裁判費用がワリに合わないことも多いです。

裁判に至る前の建物明け渡し請求をしようと考えた時点で、更新時期が近づいていたなら調停の申立てをして調停調書をとっておきましょう。

土地明渡し訴訟は、冒頭でも述べたとおり賃借人に有利な判決がされることが多いです。

当事者間の土地明け渡し請求時に相当の〈明け渡し費用〉を提示して、和解の申立てをし和解調書を取得しておくといいです。

明け渡し強制執行

調停調書や和解調書に書かれた条項は執行力があります。

なので、期限が来てから明け渡し訴訟を考えるより、事前に調停・和解の債務名義をとって、これによって期限後に明け渡しの強制執行をかける方が良いかも知れません。

長年、賃料を頂いて付き合いをしてきたのであるから、なるべく強制執行等という手続きは踏みたくないものです。

明け渡し訴訟や土地明け渡し強制執行

今までの借地借家契約は上記のように土地明け渡し強制執行や明け渡し訴訟による対策しかありませんが、借家人への強制執行などは長期の債務不履行でもされないとそもそも不可能です。

これから土地建物を賃貸する際は、普通借地権や借家権を廃除するような、定期借家契約や定期借地権契約を選択していく事が賢明です。

怖いのは「材木や資材置き場」として借地権の発生しない土地賃貸借契約をしたら、いつの間にか建物が建てられ借地権を主張されてしまうケースです。

今は全然見かけ亡くなりましたが、東京都内で山手通りや環八を走ってるとやたら材木店が目立つ地域がありました。

といっても、江東区木場ではなく別の地域です。なんで材木屋でデカいオフィスビルを兼営してるのか都内の不動産業者との世間話で聞きました。

元は材木置き場として格安で借りて、瞬く間に物置と主張しながら家を建て安い地代の借地権で土地をドンドン(実質的に)取得する方法が、一時、流行していたのだそうです。

材木屋や資材屋なら家を建てるのはお手のもので短期間に建物所有目的の賃貸借の既成事実を作ってしまったという。・・・借地権明け渡しは長期化し費用もかかります。最初の契約内容を徹底して、のちの明け渡し訴訟を回避する先見が必要です。

材木置き場の写真。

明け渡し請求と借地借家法26条

借地権の存続期間は借地借家法3条に規定されているのに、借家権については規定がなく、慣例的に2年3年と定めているだけです。

そして、明け渡し請求を確実なものとするためには、借地借家法26条1項に基づき、6ヶ月以上前に更新拒絶の通知をする必要があります。

第26条(建物賃貸借契約の更新等)

  1. 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  2. 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

借地借家法26条|法令データ

さらっと書かれています(↑)が、建物明け渡し請求が如何に困難かということです。つまり、26条1項では「更新拒絶意思表示しないと明け渡し請求できない」とあり、これは内容証明などで解決できます。

しかし、2項を考察すると、1項で家主が更新拒絶しても借家人が「開き直って居座ったら『契約更新した』とみなす」になってしまいます。

これを阻止するため、明け渡し請求の「Xデー」がきたら、遅滞なく異議を述べる、すなわち即行で内容承継郵便で明け渡し請求する必要があります。

建物明け渡しと引き渡し証

明け渡しを確実にするためには、実際に部屋を空き家にして返してもらい、鍵を引き渡してもらい、口頭ではなく、書面で明け渡し・引き渡しを完了させるべきです。

明け渡しとは、空き部屋自体の返還と「鍵」等の明け渡しを受ける部屋の所有物の引き渡しを受ける事で完了する行為です。書面による契約終了が大事です。

引き渡し証の書面は、借家人の住所氏名、物件の表示と引き渡し期日を記載し、

「本日、賃貸借契約終了による建物の明け渡しと鍵や残存物の引き渡し及び所有権放棄に合意した事を証し、本書を差し入れます」

みたいな感じで一筆もらうことが肝心です。

明け渡し請求と遅延損害金・賠償

明け渡し請求と共に遅延損害金を要求すべきことは、事業として不動産賃貸業を営んでいる限り、当然の仕事・手続きの一環です。

ところが、明渡請求の成果を出したいがため、借家人が脅威を感じるような不当に高額な明け渡し遅延の損害賠償を要求することは、消費者契約法に基づき無効とされ、この法律がないとしても、民法上の公序良俗違反により、無効とされる可能性があります。

消費者契約法と明け渡し請求

建物賃貸借契約の多くは、消費者契約法の適用を受けます。
明け渡し請求に伴う遅延損害金が不当だと、消契法10条の「消費者の義務を加重し~~利益を一方的に害するもの」として、無効にされてしまうわけです。

しかし、借主の明け渡しを遅らせている「責任」に対するペナルティを課すことで、貸主の明け渡し請求を実効力のあるものにしたいわけです。
賠償をとれず、月額家賃分しか請求できなければ、単に賃貸契約が継続しているのと一緒であり、借主には明け渡しを拒んでも何のリスクもないのだから明け渡しという制度自体が無力化します。

明け渡し訴訟判決/東京地裁・高裁

この明け渡し遅延に対する損害賠償額の相場について、地裁判決(東京地方裁判所 平成24年7月5日判決)は妥当な判旨をしています。

「(要約→)明け渡しを遅延した場合、賃料の2倍程度の損害金を支払い、これと別に実損害があれば賃料一ヶ月以上の損害を弁済することは、明け渡し義務の履行促進のためでもあり、『不当な高額』とは言えない」

地裁判決は上記のとおり、明け渡しに応じないなら賃料の2倍の遅延損害賠償や別口での実損の弁償をすることは、消費者契約法に反しないと認めています。
この裁判の控訴審である、東京高等裁判所 平成25年3月28日判決も、原判決の「明け渡し+遅延損害金」の容認を支持しています。

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※追記:リフォームモニターは終了しました。※

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